相続を巡って親族間で争いが起こるなど、誰しも避けたいところだと思います。
今回は一歩間違えばトラブルの元となりかねない、複雑な土地の相続案件を無事にまとめた一例をご紹介致します。
今回のお客様(A様)のお悩み
- 40年以上前に相続が発生した土地(地目:田)がある
- この土地について司法書士に相談して登記を進めている
- ところが40年の間に新たな相続が発生しており、法定相続人が10人以上と判明
- 相続人の中には全く知らない人、連絡先が分からない人もいる
ということで、かなり複雑な案件です。
基礎知識の解説
さて、ここで話を進める前に、まず基礎知識の解説を致します。
解説1:相続開始と相続手続き
被相続人(財産の持ち主)が亡くなり、死亡診断書に記載された死亡日が「相続が発生した日」つまり相続開始日となります。
相続登記は2024年4月から義務化されるものの、それより前では相続登記をしなかったとしても罰則はありませんでした。
ただし、不動産の相続においては、登記手続きをしないままでは権利関係が不安定になります。また相続放棄や限定承認など、定められた期限内で対応しなければならない案件も有り、手続きには専門知識が必要です。
解説2:法定相続人について
民法の規定に基づき相続権を持つ人を「法定相続人」と呼び、被相続人の配偶者と順位が高い血族の方となります。(詳しい説明はここでは割愛致します)
また「相続人」とは実際に相続する人を指し、法定相続人でなくても遺書による指定で相続する人は相続人となります。
解説3:遺産の相続方法は複数ある
ここで、相続人が複数存在する場合の遺産相続の主な方法について、ごく簡単に整理してみます。
①現物分割
土地や建物などの財産を、そのまま相続人の間で分割します。
②換価分割
遺産を売却して現金化、得られた売却金を相続人間で分配します。
③代償分割
特定の相続人が財産を相続、他の相続人に対しては「代償金」を支払う分割方法です。
解説4:共有持分について
不動産を複数名で所有する際の所有権の割合を「共有持分」と言います。
土地の相続においては、土地を分割することなく土地全体に複数の相続人がそれぞれの持分を登記することが可能です。ただし共有持分の持主は、自分1人の意思だけでは使用や処分が自由にできないなど制約が発生します。
最善の選択は「換価分割」だった、けれど…
再びA様の話に戻ります。
A様からヒアリングしてみると、北斗としては最善の選択は「換価分割」だったと思われました。
換価分割の主なメリット
- 現金化して分割するので不公平感が無い
土地を分割して相続する場合、どの部分を誰が相続するかで争いが発生する可能性があります。また共有持分の形で相続すると前述のような制約が発生します。
このため、相続した土地を今後も使用していく意思が無い場合は現金化してしまった方が相続がスムーズです。
- 現金化の手続きが簡単になる
現金化する前にいったん代表となる方が単独で登記、そこから売却手続きを行う形をとることにより、手続きの過程で相続人全員の署名・捺印をいちいち必要とすることが無くなります。
このように、換価分割には相続人となる方が多い場合でも手続きが進めやすいというのが大まかなメリットです。
相続手続きが終わってしまっていた場合は?
今回A様の場合は北斗へのご相談の前に既に司法書士に相談、各相続人の方へ共有持分の形で相続手続きをしてしまった後でした。
こうなってしまうともはや換価分割は行うことはできません。相続された方は共有持分であるがゆえに土地の使用に制限がある中で、固定資産税は負担し続けなければならないという事態になります。
不動産の専門家にも色々ある
司法書士は土地登記業務や供託業務などを行う法律の専門家で、不動産取引には欠かせない存在です。
ですが「いかに不動産を効率よく現金化するか」というノウハウにおいては北斗のような不動産業者の方に一日の長があります。今回A様にご相談頂いたのはすでに相続登記が終わってしまった後でしたが、相続人の方たちにとってメリットがある提案をさせて頂きました。
今回の『最適解』は、まとめて売却・現金化
まず北斗の不動産取引のネットワークより、共有持分が多数ある土地でも購入の意思がある買取業者をピックアップ。
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続いて下記について相続人全員から合意を頂く
・今回の買取業者との取引はA様を代表として行う
・現状のまま売却を行い、売却金額から必要経費を引いた残金を相続持分に応じて分配
もちろん、A様を代表とする旨について事前に委任状を頂くなど、後々トラブルとならないよう万全の手配しています。
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買取業者と条件の最終調整
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必要な書類の準備は北斗と司法書士で連携して行い、
契約・代金授受・引渡し・所有権移転など複雑な手続きを一括して処理
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取引完了
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A様から相続人の方たちへ代金を分配
このような枠組みを設けることで、無事売却することができました。
言わば分割登記を一度してしまってから換価分割を行うという変則的な方法ではありますが、北斗のノウハウと司法書士の連携により滞りなく完了しています。
売主様のリスク回避も重要なポイント
不動産取引においては売主は「売ったら取引は終わり。あとは知らん」とはなりません。
例えば取引後に、土地に古い井戸が埋まっていた、中古住宅で深刻なシロアリ被害があった、等の買主にとって不都合なことが発見されたらどうなるのでしょうか。買主の立場からすると大変困るのは明白です。
契約不適合責任とは?
土地を購入して家を建てたり、中古住宅を購入してそこに住んだり等、買主にとっての本来の目的が果たせない問題があった場合は「契約不適合」となります。この場合、売主は不都合な状態の解消であったり、場合によっては「代金減額請求」「契約の解除」「損害賠償請求」などに応じる責任が生じます。これが「契約不適合責任」です。
特に今回のように関係者多数の取引においては、万一契約不適合が有って相続人全員で協議が必要となると、大変な労力が必要となることが予想されます。
そこで北斗では買主となる業者に、「今回の取引では売主の契約不適合は免責」という条件で予め合意を得ており、これによってスムーズな取引を実現致しました。
起こり得るトラブルに対して予め対策を打っておくができるか、こういった点も不動産取引のプロフェッショナルとしての腕の見せ所です。
今回取引についてご注意頂きたい点
今回の記事においては、説明が複雑で分かりづらくならないよう、内容をかなり簡略化しております。
例として
- 法定相続人の正確な定義
- 換価分割のメリット・デメリット詳細
- 契約不適合その他、後々のトラブルを防ぐ契約書類の作り方
など、ここでは書き切れなかった注意点は多数ございます。
不動産についてのお悩みがある方は、ご自分でネットで調べた情報だけを過信したりせず、トラブルとなる前に専門家にご相談されることを強くおすすめ致します。